インターネット上で誹謗中傷やプライバシー侵害を受け、「弁護士に削除を依頼したいけれど、費用が高くなりそうで不安…」と感じている方は少なくありません。
削除請求は、ケースによっては自分自身で対応できる場合もあります。しかし、法的な専門知識が求められるケースや、投稿元への対応が難しい場合には、弁護士に依頼する方が迅速かつ確実です。
とはいえ、弁護士に依頼するとなると、着手金・成功報酬・実費など、さまざまな費用が発生します。中には、請求した慰謝料だけでは弁護士費用をカバーしきれないケースもあるため、慎重な判断が必要です。
この記事では、悪質な書き込みに対して弁護士に削除を依頼する際の費用相場や、できるだけコストを抑える方法について詳しく解説します。
費用と効果をしっかり見極め、無駄なく賢くネットトラブルに対処していきましょう。
削除請求の弁護士費用相場は10万~40万円
削除請求を弁護士に依頼する場合、一般的な費用相場は10万円〜40万円ほどです。
任意の削除請求であれば着手金0〜10万円、成功報酬5〜20万円程度が目安であり、仮処分申立を伴う場合は20万円以上の費用がかかるケースもあります。
ただし、実際の費用は法律事務所や依頼内容によって大きく異なるため、あくまでも参考値として考えるのが適切です。
削除が成功するとは限らないため、結果にかかわらず納得できる費用感で依頼先を選ぶことが大切です。
削除請求にかかる弁護士費用の項目
削除請求を弁護士に依頼する場合、発生する費用には様々な項目があります。
ここでは、削除請求にかかる弁護士費用の項目を6つに分けて解説します。
なお、弁護士事務所によって発生する費用の項目は異なるので、必ず契約前に確認しましょう。
相談料
弁護士へ削除請求を検討する際に、まず発生するのが「相談料」です。
相談料は弁護士に初回相談する際の費用で、30分〜1時間あたり5,000円〜1万円程度が相場とされています。
ただし、最近では初回相談を無料で対応してくれる法律事務所も増えています。
正式に依頼する前に費用感を把握したり、自分のケースで削除が可能かどうかを確認するためにも、相談料の有無は事前にチェックしておくと安心でしょう。
着手金
着手金とは、弁護士に正式に依頼した際に支払う費用で、結果の成否にかかわらず返金されないのが一般的です。
通常の削除請求では5万〜10万円程度が相場ですが、仮処分申立や訴訟を含む複雑な手続きでは20万円以上になることもあります。
弁護士によっては着手金を無料としている場合もあるため、各法律事務所の費用体系をしっかり比較することが大切です。
成功報酬
成功報酬は、削除請求によって一定の成果が得られた場合に発生する費用です。
削除が完全に認められたケースはもちろん、記事の一部修正や伏字対応など、事前に取り決めた条件を満たせば支払い義務が生じます。
相場としては5万〜20万円程度で、着手金と組み合わせて設定されていることが多いです。一方で、成功報酬を設けず、着手金のみで対応している法律事務所もあります。
依頼前に成果の定義と報酬の発生条件を明確にしておくことが大切です。
実費
実費とは、弁護士が削除請求を進めるうえで実際に支払う費用です。
郵送費、印紙代、コピー代、交通費などが主な内容で、数千円〜1万円前後が一般的です。手続きの規模や種類によって増減する可能性があります。
また、実費は着手金や報酬金とは別に請求されることが多いため、契約時に「実費が別途発生するのか」「どの程度かかる見込みか」を確認しておきましょう。
日当
日当は、弁護士が裁判所への出廷や遠方への出張を行う際に発生する費用です。
通常の任意の削除請求では日当は発生しないケースがほとんどですが、訴訟や仮処分などの法的手続きが必要になると、弁護士が現地対応することになり、日当が加算されます。
日当の相場は1日あたり2〜5万円前後ですが、計算方法は事務所ごとに異なるため要確認です。
遠方での対応を依頼する際は、日当とあわせて交通費・宿泊費の扱いについても確認が必要です。
タイムチャージ
タイムチャージとは、弁護士が作業した時間に応じて費用が発生する料金体系です。
1時間あたり2万円〜5万円程度が相場とされており、主に企業案件や複雑なトラブル解決時に採用されます。
削除請求でも、対応が長期化したり、交渉や調査が多岐にわたる場合はタイムチャージ制が適用されることがあります。
タイムチャージは想定外の出費につながる可能性もあるため、事前に「タイムチャージが発生する可能性があるか」を確認し、明確な見積もりを求めると安心です。
弁護士費用は慰謝料で回収できる?
弁護士費用が高く、慰謝料で回収できるか不安な方も多いでしょう。
ここでは、弁護士費用は慰謝料で回収できるのか、赤字にならないかについて解説します。
費用が上回る可能性もある
弁護士に削除請求を依頼した場合、支払う費用の方が慰謝料よりも高くついてしまうケースは決して珍しくありません。
特に、相手に十分な支払い能力がない場合、たとえ慰謝料を請求できたとしても、実際に受け取れる金額がごくわずかになる可能性があります。
「慰謝料で弁護士費用をまかなえるだろう」と過度に期待してしまうと、結果的に自己負担が発生し、金銭的に損をしてしまうリスクもあります。
こうした事態を避けるためには、事前に弁護士から費用の見積もりを取り、慰謝料の見込み額も含めて総合的に判断することが重要です。慎重に検討し、納得した上で依頼を進めましょう。
費用は難易度や量によって変動する
削除請求にかかる費用は、案件の難易度や投稿数、相手が誰かによって大きく変わります。
複数のサイトやSNSにまたがる投稿を一括で対応する場合や、発信者情報開示が必要なケースでは、通常より費用が高額になりやすいです。
一方、明らかな違法性があり、運営元との交渉でスムーズに削除できる場合は比較的安価で住むこともあります。
事案ごとに異なるため、弁護士への事前相談が大切です。
少額訴訟を検討するのもひとつの手段
慰謝料が比較的少額と予想される場合は、弁護士を介さずに「少額訴訟制度」を活用するのもひとつの方法です。
少額訴訟は60万円以下の請求に対応しており、手続きが簡略で費用も抑えられます。
自分で裁判所に申立てを行うことができるため、経済的な負担を軽減しながら権利を主張する手段として有効です。
ただし、手続きの知識や書類作成の正確さが求められるため、必要に応じて相談窓口を活用しましょう。
弁護士費用を抑えて削除請求を成功させる方法
ここでは、弁護士費用を抑えて削除請求を成功させる方法を6つ紹介します。
弁護士の費用体系を確認する
弁護士に削除請求を依頼する際は、まず費用体系をしっかり確認しましょう。
弁護士費用には「着手金」「成功報酬」「実費」などが含まれることが一般的で、特に日当やタイムチャージは高額になりやすいので注意が必要です。
中には、初回相談無料や成功報酬型を採用している事務所もあります。
依頼前に見積もりを取り、予算に合うかどうかをチェックすることで無駄な出費を防ぐために大切です。
費用の内訳を丁寧に説明してくれる弁護士を選ぶのもポイントです。
証拠収集は自分で行う
証拠が削除される前に、証拠となるスクリーンショットやURLは自分で保存しておきましょう。
証拠集めを弁護士に依頼すると、追加費用が掛かることもあるため、可能な限り自分で対応するのがおすすめです。
時間や日時、投稿内容が明確にわかる形で記録しておくと、後の交渉や法的手続きがスムーズになります。
被害内容が深刻な場合は、証拠の正確性がその後の対応を左右することになります。
なるべく交渉で解決する
削除請求を行う際、最初から裁判や仮処分の手続きに進むと、どうしても費用が高額になりがちです。
そのため、まずはサイト運営者や投稿者と直接交渉することで解決を目指す方法が、コストを抑えるうえで効果的です。
弁護士に「交渉のみ」を依頼する形であれば、着手金や報酬を比較的抑えられる可能性もあります。
相手が話し合いに応じる状況であれば、訴訟よりも時間的・金銭的な負担が軽く済み、費用対効果の高い手段として検討する価値が十分にあります。
サイト運営者へ自分で削除請求する
弁護士に依頼せず、まずは自分でサイト運営者に削除依頼することで、費用を大幅に削減できます。
ブログや掲示板には削除申請フォームや通報機能が備わっており、正当な理由と証拠を示せば、対応してもらえる可能性があります。
特に明確な規約違反がある場合、自力での申請でも十分対応してもらえることがあります。
費用ゼロでの対応を目指すなら最初に検討するべき方法です。
専門業者に相談する
ネットの風評被害対策や削除対応を専門に扱う業者も多数存在しています。
Googleの検索結果で上位表示されている記事や検索サジェストを削除したい場合は、サジェスト対策会社などに依頼するのもひとつです。
専門業者は弁護士より費用が安く、スピーディーな対応が期待できます。
ただし、業者の信頼性にはばらつきがあるため、過去の実績や口コミを調査してから依頼することが大切です。
弁護士との連携がある業者を選ぶと、必要に応じて法的対応にスムーズに移行できるというメリットもあります。
なるべく早く相談する
誹謗中傷やプライバシー侵害の投稿は、時間が経つほど拡散されてしまうリスクがあります。
そのため、気づいた時点でなるべく早く弁護士や専門業者に相談することが大切です。
早期対応によって被害の拡大を防ぎ、費用も最小限に抑えられる可能性があります。
タイミングを逃すと証拠の確保も難しくなるため、早めに行動しましょう。
弁護士に依頼するのがおすすめなケース
被害が深刻な場合は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここでは、弁護士に依頼するのがおすすめなケースを3つ紹介します。
SNSで誹謗中傷や個人情報が拡散されている
SNSで誹謗中傷や個人情報が拡散されている場合は、弁護士への依頼を強くおすすめします。
SNSは拡散スピードが非常に早く、自力での削除依頼では対応が追い付かない可能性が高いです。
弁護士なら仮処分の申し立てや発信者情報開示請求など、法的措置を迅速に取ることができます。
また、拡散元や再投稿者への対応も含めて、全体的な被害の拡大を防ぐ手段を講じてくれます。
リベンジポルノの無断公開されている
リベンジポルノは、名誉毀損やプライバシー侵害、さらに刑事事件にも発展しうる重大な問題です。
画像や動画がインターネット上に無断で公開された場合、精神的被害も大きく、一刻も早い削除対応が必要です。
弁護士に依頼すれば、速やかに仮処分や削除要請を行い、加害者への刑事告訴や損害賠償請求も視野に入れた対応が可能となります。
自分での対応はリスクが高く、迷わず専門家に相談すべきケースです。
企業の広告などに無断で肖像利用されている
自分の写真や映像が無断で企業の広告や商品宣伝に使われている場合は、肖像権やパブリシティ権の侵害にあたる可能性があります。
このようなケースでは、交渉相手が法人や代理店であることが多く、個人で対応するのが難しいです。
弁護士に依頼すれば、権利侵害の証明や適切な損害賠償請求が可能になり、交渉も円滑に進められます。
証拠を確保した上で、早めに専門家に相談することが大切です。
自分でも解決できそうなケース
一方、被害が軽微な場合は自分で解決できないかを検討することで、費用を抑えられるかもしれません。
ここでは、自分でも解決できそうなケースを紹介します。
被害が軽微で裁判までしたくない
誹謗中傷やプライバシー侵害の被害が軽微で、生活に大きな支障がない場合は、わざわざ弁護士に依頼して裁判を起こす必要はないでしょう。
裁判を起こすのはコスト的にも精神的にも負担が大きいです。
被害が軽微なのであれば、まずは自分で投稿先のサイトやSNSの運営会社に削除申請してみるのが良いです。
通報フォームや削除依頼フォームを通じて被害内容を簡潔にまとめて申請すれば、弁護士費用をかけずに解決できる場合があります。
明らかな規約違反・ポリシー違反である
投稿内容がGoogleや各SNSの利用規約に明らかに違反している場合、弁護士に頼らずとも削除できる可能性は高いです。
多くのプラットフォームは利用規約違反に対して厳しい姿勢を取っており、証拠を提出した上で正当な理由を添えて申請すれば、比較的早く削除対応が行われます。
違反内容が明確な場合は、自力での対応でも十分に解決できるでしょう。
自分で対処するときに気を付けること
自分で削除請求を行う場合は、まず対象となる投稿の証拠を確実に保存しておくことが重要です。
投稿が削除された後では、違法性や権利侵害を証明することが難しくなるため、スクリーンショットやURLなどを事前に記録しておきましょう。
さらに、検索結果に表示されるサジェスト(予測変換)や関連キーワードへの対策も並行して行い、被害の拡大や再発を防ぐ意識が求められます。
もし途中で「自分だけでは対応しきれない」と感じた場合は、速やかに専門の弁護士や対策業者に相談する判断力と柔軟性も大切です。
まとめ
削除請求はケースによって自力で対応できる場合と弁護士に依頼すべき場合があります。
費用を抑えたいなら証拠収集や初期対応を自分で行う工夫も有効ですが、深刻な被害がある場合は専門家の力を借りるのがおすすめです。
慰謝料で費用をカバーできることもありますが、必ずしもプラスになるとは限りません。
状況に応じて最適な手段を選び、早めの対応で被害の拡大を防ぎましょう。